みんなの「おいしい」が、だれかの「うれしい」に。 消費を投資につなげる「食のよいサイクル」づくり imperfect株式会社 浦野正義さん(前編) 【Cover Story】消費という投資 私たちにできること
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みんなの「おいしい」が、だれかの「うれしい」に。 消費を投資につなげる「食のよいサイクル」づくり imperfect株式会社 浦野正義さん(前編)

DOWELL4月号のテーマは「消費という投資 私たちにできること」。DOWELLが創刊からご紹介してきたimperfect株式会社の「Do well by doing good.活動」はまさにテーマにマッチした活動です。生活者の投票が生産者の自立支援に繋がるこの活動ですが、2020年3月をもって、第1期の取り組みを終了します。この一区切りのタイミングで、imperfect株式会社の浦野正義社長にお話を伺いました。

実業を通じて世界の食と農を取り巻く社会課題を解決したい。

DOWELL編集部: 2019年の夏にスタートしたimperfectですが、「Do well by doing good.活動」第1期の投票がまもなく終了します。このタイミングで、改めてimperfectは何を目指しているのか、第1期の振り返りも含めて、浦野社長にお話を伺えればと思っています。ではまず、そもそもなぜimperfectを起ち上げようと思ったのか、その経緯をお聞かせください。

浦野社長: 社会人になってから、私は、コーヒーやナッツ、お茶・果汁などの食品原料の輸入に携わり、世界各地を飛び回っていました。多くの生産現場を見る中で、生産に携わる人々の貧困や、搾取されている状況などを目の当たりにしてきました。その様な場所を訪れる度に「このままでいいはずはない」「この社会課題の解決に向けて何かできないか」と強く思ってきました。

ただ、それらの社会課題について取引先に「これはおかしいんじゃないか」という話をしても「それは大変ですね。話はよくわかりました。で、結局おいくらになるんでしょう?」となりがちなんです。

当時はサステナビリティ等の概念が今ほどはありませんでしたから、お取引先のご担当者が仰ることも理解できます。でも、そうは言っても、割り切れるものでもない。悶々としながらも、相変わらず忙しく世界を飛び回る日々が続いていたんですが、ある日、ああ、これは本当になんとかしなくちゃいけないな、と思うことに出会ったんです。

DOWELL編集部: それはどのようなことだったんですか?

浦野社長: もう十何年も前のことですが、仕事で南アフリカを訪れた時のことです。ヨハネスブルクの空港から目的地に向かう途中、1キロ以上に渡ってスラム街が続いているんです。そして車が止まるたびに、花などを持って「買ってくれ」と、大勢の子供たちが群がってくるんですね。本当に車が止まるたびに。貧困という意味では、似たような状況は他の国でも見たことはありました。でも、その時の子どもたちの様子が、本当にまぶたに焼き付いて忘れられないんです。格好をつけるわけではありませんが、本当に、これはおかしい、と感じました。こういう状況はなんとかしなくてはいけない、と。

DOWELL編集部: その思いをどのような形で実現しようかと考え続けて、imperfectにつながっていったということでしょうか。

浦野社長: そうですね。よく、貧困を救いたいなら寄付や募金でいいじゃないかと言われますが、私はそうではなく、imperfectという形の実業を通じて自分の考えを実現しようと考えました。寄付や募金がダメだとは言いません。しかし、それらは一過性のものです。貧しい人たちに、おカネをあげてもそれだけで終わってしまいます。一瞬は潤うかもしれませんが持続性がない。それは本質的な解決にはならないと思います。よく言われることですが、「釣った魚をあげるのではなく、魚の釣り方を伝えるべきだ」ということに、私は深く共感します。

DOWELL編集部: 「魚の釣り方を伝える」というのは、生産者が持続的に自立できるよう、支援をするということでしょうか。

浦野社長: 一言でいえば、そうです。実業で利益を出し、彼らの生活を変えていく。その方法をつくらなければ持続性がないと思います。私たちが損を出しながら、永遠に彼らの生活を支えていくということはムリな話です。本当に社会課題を解決しようと思ったら、彼ら自身が実業で自立できるようにしていかなければならない、と私は思います。その仕組みをつくるために、私はimperfectを起ち上げたわけです。

「食のよいサイクル」とは

DOWELL編集部: 浦野さんがimperfectを起ち上げた経緯はよくわかりました。浦野さんは実業を通して社会課題を解決する仕組みとして「食のよいサイクル」づくりを掲げていらっしゃいます。「食のよいサイクル」とはどのようなものなのか、改めて教えてください。

浦野社長: 一言でいえば、生産者と生活者の双方にとってメリットが循環していく仕組みです。生活者が食べ物を買って「おいしい」と感じたら、それに見合ったお金を払いますよね。それによって生産者がきちんと収益をあげることができ、それによって更なる改善が促され、生産量の拡大や品質向上、更には環境に配慮した農業の促進にもつながっていきます。そしてその効果は、生活者に更なる「おいしさ」や「環境保全」として返ってくる。「食のよいサイクル」とは、そんなサイクルが継続的に循環する仕組みのことです。

「imperfect表参道」オープンの前に提示された巨大なアート(2019年4月27日・28日撮影)

「おいしいとうれしいをつなぐ」をテーマにしたウォールアートのキャンバスは、imperfect 表参道で取り扱うコーヒーの麻袋を再利用。

DOWELL編集部: よくわかります。では次に、imperfectで実施している「Do well by doing good.活動」についても、改めて説明をお願いします。「サステナブル」などとは何か違いはあるのでしょうか。

浦野社長: まず「Do well by doing good.活動」を、「いいことをして、世界と社会をよくしていこう」と私たちは訳しています。「食のよいサイクル」を実現するための、農家の自立支援・環境保全に向けた活動であり、また「食のよいサイクル」づくりに参加してくれる協力者を募る活動でもあります。

例えば、私たちのフラッグシップストアであるimperfect表参道の店舗では、ナッツ、チョコレート、コーヒーなどの商品を購入してくれたお客様に投票チップをお渡ししています。imperfect表参道の店内では、生産者の自立支援を支えたり、環境保全を実現するための3つのテーマからなるプロジェクトを紹介しているのですが、お客様にはどれかひとつ、ご自身が応援したいと思うテーマにチップを投票していただいています。そして投票の結果をもとに、imperfectとして現地でプロジェクトを実施します。これが、私たちが実施している「Do well by doing good.」活動です。

「imperfect表参道」を企画・運営している佐伯美紗子さん

DOWELL編集部: 「投票」することによって、お店に来たお客様も「食のよいサイクル」に加わることになるというイメージですね。

浦野社長: そう考えていただければよいかと思います。「Do well by doing good.活動」の特徴は、間口が広いところだと思います。「サステナブル」という単語はだいぶ一般化してきましたが、少し高尚というか、一般的な生活者にとって、サステナブル活動への取り組みは、まだ少しハードルが高いと感じられているのではないでしょうか。「Do well by doing good.活動」は投票するだけで誰でも簡単に参加できますし、参加したことによる一体感も感じていただけるのではないかと思います。

DOWELL編集部: 大切なことは「世界にはこんな問題があるんだ」ということに、生活者に気づいてもらうことだと思います。この「投票」は、そのような気づきの機会にもなりうるのではないでしょうか。

浦野社長: 仰る通りです。imperfectを起ち上げて以降、社会課題について様々な方とお話しする機会が増えたのですが、多くの方が異口同音に「知ることから始まる」と仰います。どんなことが自分の身近で、そして世界で起きているのかを、まずは知ることが大切です。社会が抱えている問題や課題を知らなければ、問題意識を持つことは難しいですよね。

投票をしてくれるお客様は、お店を出る前に一度立ち止まって、世界にはどのような課題があるのかを知り、そして自分はどの活動を応援しようかと考えてくれます。imperfectが、お客様にとって、気付きを得られる場所になればいいなと考えています。

DOWELL編集部: 第1期投票がまもなく終了しますが、お客様の反響はいかがでしたか?

浦野社長: 非常によかったと思います。お客様が楽しそうに投票されている姿が印象的でしたね。お客様と一緒に取り組んでこその「Do well by doing good.活動」 です。その点、投票という手段は、お客様にとって参加しやすかったのではないかと思います。

もうひとつ嬉しかったのが、私たちの想像以上に、お客様が投票ボックスの前で立ち止まって考えてくれていたことです。これは、短い時間だとしても、プロジェクトで掲げている課題を、自分ごととしてお客様に捉えてもらえたことの証ではないでしょうか。ご参加いただいたみなさんには「Do well by doing good.活動」 の入口に立っていただけたのではないかと思っています。

DOWELL編集部: 参加するということが大事なのですね。

浦野社長: 私たちの会社名である「imperfect」は「不完全」という意味なのですが、この名前には、「たとえ不完全な取り組みだとしても、自分たちで出来ることから少しでも世界と社会をよくしていこう」という意味が込められています。いろいろな企業の方とお話をしていると、この点に非常に共感いただくことが多いと感じます。100%完全によいことでなくても、よい取り組みをしていることは生活者に伝えるべきだと私は思います。その取り組みが生活者に届いて評価されれば、そのようなストーリーをもった商品が売れるようになり、価格もこなれ、より多くの生活者の手に届くようになる。その結果、よいサイクルがどんどん大きくなって回りだす。そのことによって、世の中が更によい方向に進んでいく。この流れを生み出すことが、imperfectの最大のミッションだと思っています。

(中編に続く)

みんなの「おいしい」が、だれかの「うれしい」に。 消費を投資につなげる「食のよいサイクル」づくり imperfect株式会社 浦野正義さん(中編)

いいことをして、この世界をよくしていこう。~ DOWELL(ドゥーウェル)~
www.dowellmag.com

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