「ゴミを出さない経済循環」のために、企業の意識を変えていきたい。一般社団法人530 代表 中村元気さん
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「ゴミを出さない経済循環」のために、企業の意識を変えていきたい。一般社団法人530 代表 中村元気さん

東京・渋谷を拠点に、起業家と活動家が集まって、ゴミを出さない「0 waste(ゼロウェイスト)」な暮らしを考えるコミュニティが「530(ゴミゼロ)」です。

ただ、「ゴミを出さない」と言っても、現実的にはなかなか実践は難しいもの。「530」は、どのような方法で実現を目指しているのか、その取組みについて、代表の中村元気さんにお話を伺いました。

街の美化活動から始め、環境問題にフォーカスした活動へ

DOWELL編集部: まず「530」とは、どのような活動をされているのか教えてください。

中村さん: 現在の活動は、「530week(ゴミゼロウィーク)」という、年に一度、5月30日に団体のコンセプトを表現するために開催するイベントです。今年(2020年)はコロナウイルスの影響もあり、残念ながら当日はSNSでのキャンペーンのみになりそうですが、秋ごろにイベントを開催する予定です。コミュニティの皆で毎年テーマを考えいるのですが、昨年は「サーキュラーエコノミー」、今年は古きよき日本の暮らしはサスティナブルだったということを再考し、豊かな自然を取り戻すために「Back to!」というテーマでの実施を予定しています。

DOWELL編集部: ホームページのビジュアルを拝見して、てっきり「道に落ちているゴミを拾って、街を美化することで意識を高めていく」という活動をされているのかと思っていました。

中村さん: 昨年の530weekでは、来て欲しいターゲットは企業の担当者だったんですが、お堅いイメージを外すために敢えて、あのようなビジュアルにしています。半分は自分の趣味です。街なかでのゴミ拾いなどの活動は「CATs」というコミュニティ活動で行っています。CATsは、原宿のキャットストリートの地域活動で、お店の方から住んでいる方までが参加している多様なコミュニティです。こちらも僕が始めたものです。そしてその活動の延長線で、活動家の仲間とともに環境問題に特化した活動をするために起ち上げたのが「530」です。

 

DOWELL編集部: なぜ、CATsの活動を始めようと考えたのでしょう?

中村さん: 僕は古着が好きで、学生の頃は毎日のようにキャットストリートで遊んでいました。仕事をするようになってからも、何かの形でキャットストリートと関わりを持っていたかったので考えたのが、キャットストリートへの地域貢献なんです。キャットストリートって、華やかなので一見気がつかないんですが、実は足元を見ると結構ゴミが落ちていたりするんですよ。それで、街の問題について皆に気づいてもらい、皆で解決できたらと思って始めたのが、CATsです。

DOWELL編集部: CATsの活動を進める中で、なぜ新たに「530」を始めようと考えたのでしょう?

中村さん: そうですね。CATsの活動を続けていく中で、「落ちているゴミを拾う」ということと同時に、根本的な問題へアプローチする必要を感じていました。そこで、そもそもゴミそのものを出さない「ゴミゼロ = 0 waste」のためにはどうしたらいいのかという、環境問題にフォーカスした取組みを始めたいと思ったんです。そして起ち上げたのが「530」です。

企業に「ゴミを出さない経済循環」に取組んでもらう意味

DOWELL編集部: 先ほど、昨年の530weekのイベントでは主に企業を対象にしているというお話がありました。CATsの活動を伺うと、同じ環境問題に取組むにしても、一般消費者を対象にする方法もあるように思いますが、企業をターゲットに活動するのはなぜでしょうか。

中村さん: 530はまだまだ小さなコミュニティです。そのようなコミュニティが社会にインパクトを残すためには、優先順位をつけながらやっていかなくてはいけないと思うんです。一般消費者に対して「ゴミを減らしていきましょう」と言っても、その実現はとても難しい。ライフスタイルも多様化している中で、どのように取組むことが望ましいのか、全ての消費者に対して個々に僕たちが提案していくのは、現在の規模ではとてもできません。

ではどうするか。例えば洗濯洗剤のことを考えてみてください。消費者はそれぞれのライフスタイルを送っていると思いますが、実は使っている洗剤は10人に8人は同じものかもしれません。そういった日常に深く関わる製品を提供している企業の意識が変わったほうが、ゴミを減らすには話が早い、と考えたわけです。また、その企業の担当者も家に帰れば、一消費者になります。そう考えれば企業を変えることと個人を変えることは結局は同じ意味を持つのかもしれません。

DOWELL編集部: 企業が提供するプロダクトやサービスを、できるだけゴミを出さない、環境に配慮したものに変えていってもらうということでしょうか。

中村さん: そうですね。なので昨年の530weekでは、サーキュラーエコノミーをテーマに生産過程や物流も含め、改善できるところは何かを知って、行動してもらうためのワークショップを開催しました。場合によっては、直接企業に入ってお手伝いをさせてもらっています。生活者に近い場所にいる企業がどう変わるかが一番キーになると思っていますが、最終的には、生活者、消費者のライフスタイルを変えることが一番の目的です。

いい悪いという話ではなくて、どの時代でも、いま現在の自分に直接的な影響が無いことについて高い興味を持てる人は、多くはないんじゃないかなと思います。と言うより、何か問題が発生しているとしても、それによって自分の行動まで変えようという人が半数を超えるというのは、現実には考えづらい。何しろ、いまのようにコロナが大変な状況になっていても、外に出る人があんなにいるんですから。まして、ごみ問題は、自分たちに害がもたらされるまで何百年も掛かるような話かもしれない。自分たちの次の世代のことをどれだけの人が想像できるか。現実的には、非常に難しいと思います。

そう考えると、最近のESGもそうですが。数十年単位でプランを考えなければいけない企業のほうが、消費者よりも危機感を持っている状況だと思うんです。いまのままでいたら、いずれ投資家や消費者から見放されるかもしれないわけですから。だから、会社のあり方を変えることが、今後いかに自分たちの利益につながるかをお話しています。渦中にいる企業の皆さんに、火を付けるということをしています。

社会をよくするために私たちができること

DOWELL編集部: 「企業の社会的責任」という側面からも、企業のほうが消費者よりも環境問題について危機感が強いという点はよく理解できます。とは言え、これからの社会をよくしていくために、一般消費者にも何かできることはあると思います。その点についてはどう思われますか?

中村さん: それは、自分たちが買うもの、消費するものに意識を向けて「正しいと思うものを買うこと」じゃないかと思います。いまは特にコロナの影響もあって、外食よりも自炊することが多いと思いますが、普段だったらあまり気にしない食材の産地に注目したり、どうせお金を使うならこの商品のほうがいい、みたいに、みんなが消費に敏感になっているんじゃないでしょうか。これからもそのような考え方を続け、何かを買う際に自分が正しいと思うものを買うという消費をしていくことが重要だし、これは誰でもできる活動だと思います。

何かを買うということは、投票です。そして買うものがあるということは、それを売っている人がいるということです。消費者が何を選び、買い求めるか。それは、回り回って、企業が何を売るかにつながります。消費行動の大きなムーブメントは、必ず売る側、つまり企業に対して影響を与え、企業を動かしていきます。日常の消費の中で、自分が何を選んで何を必要としているのかということを気にしながら、いまも、そしてこれからも生活していくことで、僕たちはきっと世界を変えていけると思います。

DOWELL編集部: 最後に「530」の今後の展望をお聞かせください。

中村さん: さらにコミュニティを広げていくことだと思いますね。これは事業を大きくするのとは違います。小規模な素晴らしい活動をコミュニティの中にたくさんつくることです。ただただ事業を拡大するというやり方は、大量生産・大量消費のやり方と同じだと思っています。組織のあり方自体をも再考したいですね。関わる全員が意思を持って決断する自主性と、大胆な、失敗を怖がらない文化を持ったコミュニティを皆でつくりたいと思います。

まだまだ人数は多くないですが、多方面で活躍する、非常に多様な仲間が集まってともに活動しています。デザイン、エンジニア、コンサルティング、経営者など多様なスキルを持った人々が活動をつくり上げています。ただ、一番大事なことは、活動への共感と、未来を守るという強い気持ちで参加してくれていることだと思っています。今後もそういった考え方に共感して、コミュニティへ参加してくれるさまざまな活動家を迎え入れて、インパクトを生み出していきたいと考えています。

DOWELL編集部: ゴミを出さないという企業への働きかけを実行しながら、世界を変えていくという想いこそ大きな力になる。530が発信するメッセ―ジは、とてつもなく大きな力を生み出すのではないかと思いました。

いいことをして、この世界をよくしていこう。~ DOWELL(ドゥーウェル)~
www.dowellmag.com

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