母の手作りおやつ
「お母さんのおやつ」と聞いて思い出すことは何でしょう。わたしは「おやつ」そのものよりも、まず思い出すのは「おやつのルール」です。「ひとり1日、クッキーは3枚まで」。
こどもの頃には、こんな母が決めた「おやつのルール」がありました。先日そんなことを弟に話をしていて知ったことですが、妹はこのおやつのルールを守っていなかったそうです。
思えば、ドイツ人であるわたしの母はルールを守っているかどうかのチェックはしていませんでした。これは自己責任という考えだと思うのですが、ドイツらしいなぁと思います。
社会にはさまざまなルールがあります。それらは一人ひとりを守るために考えられ、そしてつくられたもの。ですからそのことを各自が認識して行動することが大事であって、それはこどもであっても同様ということでしょう。その日のクッキーを3枚食べた後に、母に「もう一枚食べてもいい?」と聞くと答えはいつも同じ。「あなたはどう思う?」でした。
では、実際の「おやつ」はどんなものだったか? お話ししたいと思います。普段わたしたちのために買い置いてくれていたおかしはゴマがはいった棒状のビスケットや香りのよいココナッツのサブレのようなものでした。甘いだけのお菓子や着色された華やかなお菓子ではなく、栄養を補ってくれるようなものを選んでくれていたのだと思います。
また、母に時間の余裕のある時にはおやつを手作りしてくれました。フレッシュなチーズを使ったさっぱりとしたドイツ風チーズケーキ、季節のフルーツをふんだんに盛り込んだパウンドケーキ……。
母の手作りおやつの思い出はたくさんありますが、そのなかでもわたしがいちばんうれしくたのしみにしていたのは「Eierkuchen(アイヤークーヘン)」です。直訳すると「たまごケーキ」という意味になりますね。たまごと牛乳を使った液体状の生地をフライパンに流して薄く焼き上げたものなのですが、そう、クレープにとてもよく似ています。