ケニアのバラを通じて「Do well by doing good.」/アフリカの花屋・萩生田愛さん 【Cover Story】うれしいをつなげるサイクル
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ケニアのバラを通じて「Do well by doing good.」/アフリカの花屋・萩生田愛さん

大学卒業後、製薬会社勤務を経て貧しい人たちのためにボランティア活動をしようと2011年アフリカ・ケニアに渡った萩生田愛さん。「援助に慣れきっている現地の人々の姿」にショックを受け、援助ではなくビジネスとして対等な立場で関わりたいと想うようになりました。そして、翌年の2012年には、現地で知った生命力溢れるバラの花をインターネットで販売する「アフリカの花屋」を立ち上げます。その後、2015年10月には専門店「AFRIKA ROSE」を東京・広尾に、さらに2019年4月には「AFRIKA ROSE & FLOWERS」を六本木ヒルズ内にオープンしました。今回はそんな萩生田さんに、お仕事を通じたご経験やお感じのこと、今後やってみたいことなどを大いに語っていただきました。

自分は世界に対してどういう貢献ができるのだろう

DOWELL編集部: 今日はよろしくお願いします。

萩生田さん: こちらこそよろしくお願いします。

DOWELL編集部: 起業される前、萩生田さんは、どんな生活を送られていたのでしょうか? まず、そこからお聞かせください。

萩生田さん: 製薬会社のOLとして働いていました。その頃は海外に何度も出張したり、世界中を舞台にするような憧れの仕事といいますか、製薬会社でしたから薬を通じて人の命にも貢献できて、仕事はとても充実していました。上司や同僚、後輩に恵まれ、家族の理解もあって何の不満もないOL生活を送っていました。

DOWELL編集部: その萩生田さんが、どうしてアフリカに興味を持たれたのでしょうか?

萩生田さん: もともと学生時代にアフリカ諸国、それも開発途上国といわれる国の貧困問題について興味を持っていました。そんな私が製薬会社で働いて、アフリカとは全く関係のない生活をしているうちに、そこにいる自分とのギャップといいますか、学生の頃に抱いていた想いが、いつしかふつふつと蘇ってきました。そして充実した生活を送っている一方で、今、自分は世界に対してどういう貢献ができるのだろうかと、そんなことを日々考えるようになっていたのです。

DOWELL編集部: なるほど。いきなりアフリカに興味を持ったわけではなく、学生時代からのベースがあったのですね。

萩生田さん: ええ、そうなんです。

地方へ行くと、靴も履いていない子供たちが。

DOWELL編集部: 実際にアフリカに行かれて、どうでしたか?

萩生田さん: アフリカには54ヵ国あるのですが、私が行ったケニアは治安も安定していますし、アフリカの優等生といわれるような経済的にもアフリカのハブになる国です。その首都であるナイロビには高層ビルが立ち並んでいて、裕福な人もたくさん住んでいます。

その一方で、首都から車で2、3時間も地方へ行くと、靴も履いていない子供たちがいたりするんですよ。干ばつが続いて農作物が採れないので、生活が立ち行かなくなってしまった農家の人とか、家計を支えるために働かなくてはならないので学校に行きたくても行けない子供がいたりして、貧富の差を目の当たりにしましたね。

DOWELL編集部: それまで日本で生活していた萩生田さんにとって、それは一種のカルチャーショックだったかもしれないですね。

萩生田さん: 貧困問題というのは、調べればいろいろなことが分かります。どの国の人が1日1ドル以下での生活を余儀なくされているのかといった情報は日々入ってきます。

でも、この豊かな日本で生活していて素敵なお洋服を買ったり、おいしいランチを食べたりとかそんなことを普通にしていると、今、地球の裏側で何が起きているかを体感することができないじゃないですか。ODAなどで援助して、お金がアフリカに渡っていることは知っていても、「それがどのように役立っているのか。本当に役立っているのか。もしかすると、アフリカの人たちが本当に必要としていることに、そのお金が使われていないのかもしれない。」そんなことが知りたくて、そして、その中で自分は何ができるのかを確かめたくなって現地に行ったという感じでしたね。

アフリカのバラとの出会い。

DOWELL編集部: その中でアフリカのバラとは、どのようにして出会ったのでしょうか?

萩生田さん: ケニアにいた6ヵ月間、土日はナイロビにいて、月曜日から金曜日までは小学校を作るために電気も水道もない小さな貧しい村で暮らすというそんな生活を送っていました。

それで土日にナイロビに帰ってきた時、近所にアフリカのバラを売っている花屋さんがあって、そこにあったバラはマーブル模様とかグラデーションのものとか、日本では見たこともないようなバラだったんです。あまりにもきれいだったので、買ってきてリビングに飾ったんですけど、月曜日から金曜日までは村に行かなくてはなりません。その間、水を替えることもできないし、お世話をする人もいないので、次の週末に帰ってくるまでには枯れてしまうだろうと当然思うじゃないですか。

DOWELL編集部: そうですね。1週間もお水がそのままだったら、普通なら枯れてしまいますよね。

萩生田さん: そう思うでしょう? ところが、ナイロビに帰ってみると、元気に一週間前と同じようにきれいに咲いているんですよ。それを見て、このバラは生命力に溢れた、何てパワフルでたくましい花なんだろうと感動してしまいました。初めて見た時にはその美しさに驚いて、1週間後にはそのパワフルさ、ダイナミックさにと2段階でビックリしたんです。それが私とアフリカのバラとの出会いでしたね。

アフリカだからこそパワフルでたくましくて美しく咲くバラ

DOWELL編集部: その後、2012年にアフリカローズを創業された経緯はどのようなことでしたか?

萩生田さん: 素晴らしい生命力を持った美しいバラと出会って感動はしましたけど、まさか自分がそれを売るようになるとは全く考えてもいませんでした。ただ、日本に帰ってきてから、日本でもあのバラを買うことができるんだろうかという単純な思いで調べてみたら、ある大手のサイトでケニア産のバラを売っていたので、それを買ってみたのです。

ところが、そのバラは日本のどこにでもあるような普通のバラで、私を感動させたあのバラとは似ても似つかないものだったんですよ。ケニアのバラはもっとたくましくて強くてパワフルなんだ、こんなものじゃないと私は憤りにも似た思いを感じてしまって、その瞬間、日本で誰も売っていないのなら私が売ろうと思いました。アフリカだから安かろう、悪かろうではなくて、アフリカだからこそパワフルでたくましくて美しく咲くバラというブランディングで、ケニアのバラをたくさんの人に知ってもらえたら素敵だし、アフリカで暮らしている人たちの支援にも繋がっていくのではないかと思って始めたのです。

上から与えるのではなく、お互いに切磋琢磨。

DOWELL編集部: 萩生田さんがこれまでいろいろとやってこられて、私が一番素晴らしいと思ったのは、萩生田さんが上から目線でものを与えるだけではなく、それ以外の援助の仕方はないかを考えていらっしゃる社会起業家さんだということなんです。その点に関しては、ご自分ではどのように思っていらっしゃいますか。

萩生田さん: 先ほどもお話ししたように、私はケニアの小さな村で小学校を作るプロジェクトに参加していたのですが、そのことによって学校に通えるようになる子供が増えることは素晴らしいことです。もちろん、それを否定するつもりはありません。

ただ、その時、現地の人に「How can I help you?」と言われたことが私にはとても印象的でした。

これはどういうことかというと、そこは特に貧しい地域なので「僕たちはお金を持っている。君たちは貧しくてかわいそうだから援助してあげるよ」といって、いろいろな所から外国人が入れ代わり立ち代わりやってきていたんですね。だから、現地の人たちはそういうことに慣れきってしまっていて、「僕たちがどういうふうに協力したら、タダで学校を作ってくれるんだい?」って言うわけですよ。

その言葉を聞いた時、私はすごい違和感を覚えてしまったんです。もちろん緊急的な支援は大事で、それに反対しているというわけではありません。ただ、もっと長期的な視野で考えた場合、自立できる力のある人なのに与えるだけの支援をしてしまったら、その人を弱くしてしまうのではないか、彼らの中に怠惰や依存を生んでしまうのではないかと考えてしまったのです。そして、このままNGOで学校を作るという道は、私にとって納得できないものになってしまいました。

私は、上から与えるのではなくて、彼らと対等な立場で価値のあることやものを交換して、お互いに切磋琢磨しながら成長していけるような関係を築きたくって、それにはどうしたらいいのかを一生懸命考えました。

実業を通して彼らと対等な立場で。

DOWELL編集部: そして、その答えがアフリカのバラだったということですね。

萩生田さん: ええ、そうです。

働くということは、お金を得て生活する以外にもっと重要な意味があって、自分が好きなことをすることが喜びになったり、お客さんに笑顔になってもらうことで満足したり、あるいは、社会と繋がっていることで充足感を覚えたり、そういったことが働くということだと私は思っています。

特にケニアは失業率が40%にもなろうという国ですから、働きたくても働く場所がないのですよ。だったら、小学校を作るのではなくて、雇用の機会を作ることに貢献したい。幸いにも日本ではほとんど知られていない素晴らしいバラがあり、日本のたくさんの人に喜んでもらうと同時にアフリカに雇用を作ることができると思ったのです。

DOWELL編集部: 事業を通して社会をよくしていこう、そういう選択をされたということですね?

萩生田さん: はい、そういうことになりますね。

DOWELL編集部: それは現地の人たちの継続的な成長にも繋がるでしょうし、もっとパーソナルなことをいうと、これは何もケニアだけではないと思いますが、お金をもらえるだけではなくて、人に喜んでもらったり、社会との関わりがあるということは大事なのですね。

萩生田さん: そう思います。自分のやっていることが人の役に立っているというのは嬉しいことですから。

DOWELL編集部: 事業を始めて何年目になりますか? 創業時に苦労されたことはどんなことでしょうか?

萩生田さん: 初めてケニアから輸入したのは2012年の6月でした。当時は店舗もなく月に何回かのイベントや販売会で売っていましたね。1人で始めたので、夜中に自分で車を出して、アフリカから届いた花を税関へ取りに行きました。何千本ものバラを無駄にしないために早く水揚げをして、次の日には店頭に立っていましたので、最初は48時間一睡もしないで働いたりしていましたね。

「大変だね。大丈夫?」と心配してくださる方もいましたが、自分が好きで始めたことでしたから、苦労だとはちっとも思わなかったですね。

そのうちお客さんの中から仕事を手伝ってくれたり、応援してくれる人が出てきて、結婚をしてからは夫が、子供を産んでからは実家の母が、と周りの人たちに助けられてここまで来たという感じですね。本当に感謝しています。

自分自身が幸せでないと、人を幸せにすることはできない。

DOWELL編集部: 事業を立ち上げる際に思っていたフェーズでいくと、今はどのような環境でしょうか。

萩生田さん: 最初から、社長になりたいとか、ビジネスで成功したいといった思いで起業したのではなかったです。このケニアのバラの美しさ、パワフルさをたくさんの人に知ってもらって、アフリカに雇用の機会を作りたいと思ったスタートでしたから、うまくいかなかったら畳むつもりでした。もし、お客さんがいてくれたら継続していくし、無理をする必要はないという考えでした。

創業時から応援してくれていた方がお手伝いしてくださったり、その時は本当に周りの方の支えで続けることができていた事業でした。

DOWELL編集部: それでも2015年の5月に広尾に初めての店舗をオープンされました。都内に、それも広尾という都心の一等地にオープンされたというのはすごいことだと思うのですが。

萩生田さん: お店を持つという夢があったわけではないんです。むしろ逆に、お店を構えるのはリスクになりますし、インターネットでやっていければそれでいいと思っていました。

ただ、当時はまだ月に一度だけの輸入でしたから、妻の誕生日に贈りたいとか実物を見てから買いたいといったお客様からのニーズには応えられず、ビジネスチャンスを逸していて経営的に売り上げが頭打ちになっていたのも事実でしたね。

そんな時、ある人がお店を出したほうがいいとアドバイスしてくれたのです。それまでは1人でやっていればいつでも辞めれる気安さでやっていましたが、たしかにここまで来たら、従業員を雇ったり、家賃を払ったりといったリスクを抱えて、責任感を感じながら前に進んでみようと思って決断しました。

そうなると、定期的に買ってくださるお客さんが増えてきて、何とかここまでくることができました。私は本当に周りの人に恵まれているなと思いますね。

DOWELL編集部: 仕事をするのなら、社会に役立つ仕事をしたい、そういう学生が増えてきました。そんな若者に一言いただけますか?

萩生田さん: 社会起業家を目指すというと、何かすごいこと、大それたことをやらなくちゃいけないとか、影響力を及ぼさなくちゃいけないとか思って自分とのギャップに悩んでしまいがちですが、自分ができることをやっていけばいいと私は思います。

それと、私は自分自身が幸せであったり心に余裕がないと、人を幸せにすることはできないと信じています。例えば、一輪でもいいから花を飾ってみて、朝など時間に追われる日常の中、水切りの過程の中で花を見て綺麗なものを綺麗と感じられる心の余裕が、一番大切だと考えています。

自分が我慢して人に何かをしてあげる、本当は自分が欲しいのに遠慮して自分は後回し。私はいいです、どうぞどうぞというのは、日本人の美徳のように見られていますが、私はこういう姿勢は間違っていると思っています。

現地の水や教育や衛生の改善を目的に「ローズハウスプロジェクト」が始動

DOWELL編集部: 今後の展望はどのようにお考えですか?

萩生田さん: 今、最も力を入れているのがこの11月にスタートしたばかりの「ローズハウスプロジェクト」です。7年間バラを売り続けてきて、雇用がどの程度増えたのか、現地の生産者の生活はどれくらい豊かになったのかがとても気になったので、8月に現地にヒヤリングに行きました。

その結果、雇用が増えていることは増えていましたが、何百人というインパクトは与えられていないという事実を突きつけられ、貧困に苦しんでいるエリアがまだまだたくさんあることが分かりました。

今まで雇用を通じてということにこだわってきました。もちろん雇用を増やすことは大事ですが、それだけをやっているのでは直接的なインパクトが足りないと思ったのです。

そこで、現地の水や教育や衛生に関わる地域コミュニティ生活労働環境の改善を目的に「ローズハウスプロジェクト」をスタートしました。

これは毎月毎月の会費制になっていて、奥さまの誕生日とかご両親の結婚記念日とか大事な日を1年の内3日、登録と予約ができ、その日にこちらからバラを贈るというものです。このプロジェクトの会員を増やすことで現地の生産者の生活をバックアップできるのではないかと考えています。

DOWELL編集部: なるほど、それは素敵なプロジェクトですね。多くの人に参加していただけると嬉しいですよね

萩生田さん: ありがとうございます。そうだといいんですけどね。

DOWELL編集部: 最後に、萩生田さんにとって「Do well by doing good.」とは?

萩生田さん: 1輪のバラには心を豊かにしてくれるパワーがあります。それを贈っても贈られても心が満たされ、幸せな気分になってきます。そして、そのことが回り回ってケニアの貧困に苦しむ人たちの生活を支えるようになると信じています。それが私にとっての「Do well by doing good.」だと思います。

DOWELL編集部: 今日はありがとうございました。

萩生田さん: こちらこそありがとうございました。

いいことをして、この世界をよくしていこう。~ DOWELL(ドゥーウェル)~
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