アフリカの雄大な自然からインスピレーションを受けたデザイン/ andu amet(アンドゥアメット)・鮫島弘子さん(後編) 【Cover Story】 世界が取り組むウェルライフって?
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アフリカの雄大な自然からインスピレーションを受けたデザイン/ andu amet(アンドゥアメット)・鮫島弘子さん(後編)

絹のようなしなやかさと羽のような軽さがありながら、丈夫さも併せ持った世界最高峰の羊皮「エチオピアシープスキン」を使ったラグジュアリーなレザーブランドが「アンドゥアメット」です。アフリカの雄大な自然にインスピレーションを受けたという独創性の高いオシャレなデザイン、そして、触れた瞬間幸せになってしまう極上の感触に魅せられている人も多いことでしょう。

前編に続き、アンドゥアメットを立ち上げた鮫島弘子さんに起業からここまでの歩みや今後の夢などについて伺いました。

起業から8年

DOWELL編集部: 2012年に鮫島さんが起業されて、8年が経ちました。鮫島さんにとって、この8年間はどうでしたか? エシカルに関して、消費者もそうですが、起業家自らにもマインドの変化があったのではと思うのですが、その辺はいかがですか?

鮫島さん: SDGsという言葉が国連により制定されて以来、マイクロプラスチック汚染やフードロスなどの問題に注目が集まってきていますね。一時のブームではないかとか表面的すぎるという声もありますが、形から入っても繰り返されることにより定着化していくのであればいいことだと思います。

日本でも8年前より関心が高まってきたのは事実だと思います。

DOWELL編集部: 鮫島さんからご覧になって、お手本になりそうな国を挙げるとすれば、どこになりますか?

鮫島さん: 難しい質問ですね。国によって経済状況や文化、ライフスタイルなども異なるので、この国の政策を真似すればいい、というようなお手本は思いつきません。ただ日本とエチオピアとのデュアルライフを送る中で、様々な国の人と話していると、日本との感度の差は感じます。

日本は経済発展し医療や教育も普及していますので、SDGs全体の達成度としては上位に入りますが、たとえば、「使う責任作る責任」の達成度は企業側の努力はもちろんですが、消費者一人ひとりの意識改革ももっと必要だと思います。

DOWELL編集部: 消費者が商品を一つひとつ考えて選ぶというような活動をしていけば、企業に対して投資されるわけですから、よりいい選択をみんながすることで、その企業が伸びるし、いい社会も循環していくことになりますね。

鮫島さん: そうだと思います。

消費の質を高めるライフスタイル

DOWELL編集部: SDGsへの対応は答えが1つではないので難しいですね。

鮫島さん: そんなにシンプルでしたら、全ての国が同じ政策を取っているはずですものね。

DOWELL編集部: これからの日本は人口も減ると言われているので、量よりも消費の質を高めていきたいですね。

鮫島さん: そうですね。例えば100円ショップでちょっと可愛いマグカップを買ったとします。安くて可愛くて、買ったその瞬間は高揚感があるかもしれないけど、でも大して思い入れもないから、壊れていなくても、ものとしてはまだ十分使えても、数か月後に新しい別のカップを手にいれた途端に、簡単に捨ててしまったりしますよね。そういう消費を続けていても結局自分の心は満たされなかったりします。それより、お気に入りの陶芸家の作ったカップを購入して、土の感触とかハンドメイドの温もりを感じながら、長いこと愛用するほうが満たされたりする。そういうライフスタイルこそが、これからの豊かさだと思うんです。

DOWELL編集部: 男性で言えば、靴でしょうか。いいものを買い、メンテナンスをすれば長持ちします。

鮫島さん: その靴を入社式の時に履いて行ったなとか、一緒の時間を積み重ねられたら素敵ですよね。持ち物一つひとつに思い出やストーリーがあるのは楽しいし、そういう使い方をしている自分のことを誇りにも思えるのではないでしょうか。

私が手掛けた商品は全て自分の子供のようなもの

DOWELL編集部: アンドゥアメットの商品はエイジングも楽しめる商品だと思うのですが、メンテナンスも楽しみの1つです。壊れた時の修理はどうなっていますか?

鮫島さん: 永久修理制度というものをご用意しています。故障の内容や購入してからの期間によって無料と実費のみ頂戴する場合がありますが、買ってもらったものを長く使ってもらえるように、私たちも出来るだけのことをしたいと思っています。

DOWELL編集部: 次にデザインについてお話をお聞かせください。

鮫島さん: 全て私が担当しています。もともとデザイナーで、そちらが本業です。製品だけでなく、オンラインストアで使うような写真の撮影やコピーの作成、店舗デザインまでクリエイティブに関することほぼ自分で行っています。その代わり、お金の計算とか営業とかはまったく得意ではありません。

本当にいいものを作りたい。それが事業でも最優先事項です。

でもそうやって地道に積み上げていけば最後にはお客様も喜んでくださる。

私が手掛けた商品は全て自分の子供のようなもので、嫁ぎ先で大切にされている様子をたまに見せてもらうと、この仕事をやっていてよかったと思います。

DOWELL編集部: 鮫島さんにとっていいものってどんなものですか

鮫島さん: まずは素材がいいこと。デザインに関しては美しいことはもちろん、流行の模倣ではなくオリジナリティが追求されているとか、それから目に見えるところだけではなく、見えない製造過程まできちんと配慮されていること、などでしょうか。

ブルーナイルにそよぐ風にインスピレーションを受けた

DOWELL編集部: たしかに個性的なカラーリングですね。自然を連想させます。

鮫島さん: ありがとうございます。仰る通り、アフリカの自然や文化からインスピレーションを得たカラーリングなんですよ。例えばこのカラーリングのブルーはナイルブリーズという色です。

アフリカを縦断するナイル河はその源流の1つがエチオピアにあります。ブルーナイルというエチオピアを流れる河がエジプトまで流れていくんです。そんなブルーナイルにそよぐ風をイメージしたのがこのナイルブリーズです。

こちらのカラーリングはエチオピアンローズです。生命力が強く、色鮮やかで大輪のエチオピアのバラをイメージしました。こちらはミミ。エチオピアの言葉で小さな女の子という意味。恥ずかしそうにはにかむようなキュートさとはつらつとした元気の良さを感じさせてくれるカラーリングにしました。

左から、ナイルブリーズ、エチオピアンローズ、ミミ

商品の一つひとつにストーリーがある

DOWELL編集部: 商品の一つひとつのデザインにストーリーがありますね。

鮫島さん: 自分の中に風景があって、そこから皆さんが幸せで元気になれるようなデザインを考えています。黒もありますが、こういう鮮やかな色を使用したものが圧倒的に多いですね。どのシリーズでもピンクやオレンジ、ブルーが断トツに売れています。

DOWELL編集部: アンドゥアメットに使われているエチオピアのシープスキンは質感、肌触りも良くて、とても高級感があります。素材の調達に対するこだわりについてお聞かせください。

鮫島さん: エチオピアは世界でも有数の革の産地で、国内には革のなめし工場が沢山ありますが、その中で私たちが調達出来るところは2か所だけです。その2か所ともエチオピアではトップクラスの浄化システムを持っています。

ご存じだとは思いますが、革をなめす時には様々な化学薬品と大量の水を使います。それらの水はきちんと浄化してから川や海に排出されるべきなのですが、途上国の一部ではそうしたシステムが十分ではなく、薬品まみれのまま排出され、それが化学変化をおこして猛毒物質に変わり、地域の農作物や住民に大きな被害を与えているということがあります。

エチオピアにももちろん浄化システムに関する法的規制はあり、どの工場も最低限の認証を取得していたりするのですが、実際に工場にいってみるときちんと稼働していないということも少なくないのです。

私はボランティア時代も含め、そうした表と裏の乖離をたくさん見てきました。だから、実際に取引をする前に、オフィスだけではなく必ず工場を何度も訪問して、どのレベルの浄化システムが導入されているか、きちんと稼働しているか、その他の労働環境も問題ないかなどを必ず確認するようにしています。それも一度だけではなく、何度も。そういうチェックを経てOKのところとだけしか取引をしない、となると、取引工場が限られてきてしまうのです。

DOWELL編集部: なるほど。鮫島さんが1年のうち半分くらいアフリカに行かれているのは、現地のあちこちを見て回られているからなのですね?

鮫島さん: それもあります。

DOWELL編集部: 国内ではほぼ日さんともコラボされていますね。

鮫島さん: ほぼ日様も流行りものを追いかけるということではなく、本質を追求して自分たちがいいと思うものを作ったり、記事にされたりする会社で、もともと私が大ファンだったんです。そんな中で、たまたま対談記事を掲載いただく機会があり、そのご縁でのコラボレーションになりました。具体的にはほぼ日手帳の手帳カバーのやはりデザインと生産を担当させていただきました。

DOWELL編集部: クラウドファンディングも行っているようですが、これについてもぜひお聞かせください。

鮫島さん:  実はずっと店舗を構えるということに対して懐疑的だったんですよ。ネットが普及している今の時代、店舗みたいな資金や人手や時間が必要になるものをわざわざ持たなくても売れるんだから、必要ない、体は小さくしておいてその代わりエッジの聞いたことをずっとやっていたいと思っていたんですね。

もっと、日本や世界の人たちにエチオピアやアフリカのすばらしいものについて発信したいとか、お買い物をするときに、人々が物の裏側に潜むそれぞれの物語にまで想いをはせ、楽しめるような社会を作っていきたいとか、お客様にバッグを持つ以上のワクワクを提供したいとか。そういうマーケット側にも、一石を投じられるようなことをしていきたい、そのためには拠点が必要だと思うようになりました。

でも、悩みました。出店のような大きな資金を必要とする挑戦をしてもしうまくいかなかったら、倒産してしまうかもしれない。そうなったらこれまでがんばってきた職人たちを、路頭に迷わせてしまう。日本と違って失業保険もないですしね。自分だけならなんとでもなるけど、職人の数も少しずつ増えてきていただけに、本当に最後まで悩みました。絶対に失敗できないなと思いつつも、今やらなくてはという考えも強くて、それでクラウドファンディングで資金調達をすることにしました。どのくらいの人が応援してくれるのかを確かめてみたい、という気持ちもありました。

ところが、蓋を開けてみると多くの人が応援してくれました。ずっとファンでいてくださる方はもちろん、創業時の品質もサービスも今よりずっと未熟だった頃に厳しいお言葉をくださった方もいて、見てくださっていたんだ、この期待に絶対にこたえなければ、と覚悟を新たにしました。

現地のアトリエの様子

DOWELL編集部: お店ではバッグ以外にもアクセサリーやストールなども販売されていますね。

鮫島さん: はい、その時々によって置いてあるものは違うんですが、アフリカ中を私自身が旅する中で見つけたデザインが素晴らしかったり製造過程にも配慮されていたりするような、素敵なものをご紹介しています。例えばこちらのネックレスやピアス、何を原料に作られたものかわかりますか?

DOWELL編集部: わからないです。何でしょう?

鮫島さん: 弾薬の薬莢から作られたものなんです。エチオピアは昔エリトリアという国と戦争をしていて、武器や弾薬が今でもたくさんあるのですが、人を悲しませるものではなく幸せにするものに作り変えようというコンセプトでエチオピアのNGOで作られています。

DOWELL編集部: ネックレスを目にして、色んなことを考えさせられます。

長時間、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

鮫島さん: こちらこそありがとうございました。

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