“余剰生地”からサステナブルなドレスをデザイン!(前編) /デザイナー・アーティスト・篠原ともえさん 【Cover Story】世界と社会をよくする時代へ!
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“余剰生地”からサステナブルなドレスをデザイン!(前編) /デザイナー・アーティスト・篠原ともえさん

歌手、女優、ナレーター、イラストレーター、デザイナーなど、さまざまなジャンルで活躍されてきた篠原ともえさん。昨年はクリエイティブディレクターのご主人とともにデザイン会社を立ち上げ、新たなアーティスト活動をスタートしました。この夏、渋谷で行われた、ギャラリーでの開催としては自身初となる個展では、服を作る際に出る“余剰生地”を使ったドレスを発表。サステナブルな取り組みが話題に。試行錯誤を繰り返しながら、「進むべき道」を見出した篠原さんに、創作への思いを伺いました。

(文責:DOWELL編集部・山田ふみ)

シャツブラウスをロングドレスにアップサイクル!

その日、篠原さんが着ていたロング・シャツドレスは、胸元のレイヤードとサイドのスリットが印象的なシルエット。透明感のある爽やかなブルーが秋の空に優しくひるがえります。

「今回のシャツブラウスは、DOWELLのコンセプトにも通じるサステナビリティを意識し制作しました。もともとボウタイのシャツブラウスだったのですが、襟をカットしてデザインを変え、余っていた布を裾に足してアップサイクルしてみました」

個性的なファッションで日本中に“シノラー”旋風を巻き起こした10代の頃から、衣装やスタイリングにこだわりを持ち続けてきた篠原さん。歌手、女優、イラストレーターなどマルチな才能を発揮し、2013年には松任谷由実(ユーミン)さんのステージ衣装を担当。それをきっかけに、2015年には嵐のツアー衣装を手がけるなど、衣装デザイナーとしてもキャリアを積み重ねてきました。

そして今年7月、ギャラリーでの開催としては初の個展となる『SHIKAKU—シカクい生地と絵から生まれた服たちー』(2020年7月1日〜7月20日)を開催。洋服を作る際に生じてしまう“余り布”に着目した6着のドレスを発表し、多くの人に驚きと発見を与えました。デビュー25周年を迎えた篠原さんにとって、この展覧会は新たな挑戦の場でもあったと言います。

“社会”に目を向けたものづくりが始動!

Art Book「SHIKAKU」より

Art Book「SHIKAKU」より

「衣装デザインをメインに手がけていた頃の私は、着る人が喜んでくれる衣装や、自分が作りたい服を創作することが仕事のゴールでした。でも、芸能活動の節目の年に自分がやるべきことを考えたとき、“社会”に目を向けたものづくりに挑戦したいと思ったんです」

社会の課題と向き合うと決めた背景には、「余剰生地」の問題がありました。

それは篠原さんがこれまで服飾に関わってきた中で、どうしても気になっていたことでした。

「衣装の仕事を始めたときに、まず驚いたのが廃棄される布の多さでした。華やかな衣装の世界は、よりよいステージを作り出すためにサンプルや予備も必要で、制作途中でデザインや素材が変更になることも多々あります。買い付けなどで立ち寄る生地の仕入れ先の方からも、いつも余り布の話を聞いていました」

襟ぐりや袖のカーブに合わせて布をカットしていく裁断のプロセスにおいても、余り布が出てしまいます。実際に服を作るときに使う布は全体の70%くらい。残りの30%は使い道がなく、廃棄するしかありません。

「余った布で一緒に作品を作りませんか?」という篠原さんの提案に、仕事でお付き合いのあった舞台生地の加工・卸をされている「ogawamine LAB」(※)の方が賛同。展覧会に向けた創作活動が始動しました。

「ファッション業界全体がサステナブルな方向に進む中、衣装の世界でもその取り組みに向き合っていく必要があると感じました。生地の余剰を少なくするには、服に合わせて布を使うのではなく“布に合わせて作る服”があってもいいはず! という発想から私の挑戦がスタートしたのです」

(※)ogawamine LAB https://ogawaminelab.com

余剰素材を新しい価値に変換する“アップサイクル”なクリエーション

「生地をできるだけ無駄にしないために、今回は布にハサミを入れず、布幅すべてを使いながらギャザーを寄せたりタックを入れたり。また余剰パーツをつなげて立体的なドレスのシルエットに仕上げるなど、作品一つひとつに無駄を出さない工夫を凝らしました」

“布(ぬの)パンコール”は小さな四角い布をスパンコールのように重ね、モノトーンのドレスに仕立てた作品。布の先の軽やかなカールがモノトーンのグラデーションにアクセントを加えています。

「ふわふわの弾力が全身を覆い尽くすチュールのドレスも、廃棄されてしまう余剰の生地から制作しました。白と黒のコントラストを重ね合わせながら、生地を丸ごと手繰り寄せ、手縫いで大胆にボリュームをもたせました」

“シカク”から生まれた “絵を服に”する 

今回の創作では、描いたドローイングや絵そのものを服にすることで「私にしかできない表現を追求しよう」という篠原さんの着想がありました。

「子供の頃から、わら半紙にスケッチやデザイン画を描くのが大好きでした。誰に見せるわけでもなく、四角い空間の中で自由に絵を描くということが当たり前のように日常にあったんです。展覧会では、絵やドローイングそのものを服へと展開させたらどんなものができるのだろうと考えました。その結果、絵画から思いがけないアイデアが生まれ、創作意欲がさらに掻き立てられました」

Art Book「SHIKAKU」より

「“四角”や“端切れ”への愛着の原点に、お針子だった祖母から受け継いだ着物があります。洗い張りのためにその着物をほどいたとき、無駄のない合理的な四角いつくりと丁寧な運針にハッとしました。祖母の着物は、ものを“持ち続ける”ことの大切さを教えてくれ、そしてまた『私は三世代先まで残せるものを作っているのだろうか』と考えるきっかけを与えてくれたのです」

デザインへの新たな気づき

2018年、アッシュペーフランス主催による合同展示会で約150枚ものデッサンを初公開した篠原さんは、この企画展でアートディレクションを担当したクリエイティブディレクター、池澤樹さんと昨年結婚しました。

「アートディレクターでもある彼はデザイン一筋の人生を過ごしてきた人。作品のレベルも高く、衣装などの相談をすると、私が思いもつかないプロフェッショナルなアイデアをもらうことができます。デザインで人を惹きつけ、ひたすらクオリティを高めていく夫の姿が、デザインへの新たな気づきとなり、もう一度デザインを学び直したいと思うようになりました」

個展の作品づくりに向けて、仕事を1年休んで母校・文化女子大学(現・文化学園大学)の門をくぐることに。夜間のオープンカレッジで、改めて衣服の基礎であるパターン製作の知識を深めました。

「ずっと続けてきたエンターテイメントの現場を離れることに、やはり不安はありました。でも、私がこれまで描いてきたデザイン画や制作してきた衣装を彼に見てもらったとき、“これだけ好きなことに取り組んできたんだから、そこをさらに突き詰めてみたら”と背中を押してくれたんです」

池澤さんとともにクリエイティブスタジオ『STUDEO』を設立。デビュー25周年に向け、作品づくりのスタートを切りました。2020年春、それは篠原さんにとって人生最大の転機となりました。

デザイナーとしての高みを目指し続ける篠原さん。後編では、初の個展に取り組む中で感じたことや社会への思いなどを伺っていきます。

(後編)を読む>>>

篠原ともえ(デザイナー/アーティスト)

1995年ソニーレコードより歌手デビュー。歌手・ナレーター・女優活動をはじめ、衣装デザイナーとしても創作活動を続け、アーティストのステージジャケット、番組衣装を手がける。地方創生の地域ブランディングにも積極的に参加し、多方面からデザインの仕事に取り組んでいる。2020年、夫でクリエイティブディレクターの池澤樹氏とクリエイティブスタジオ『STUDEO』を設立。

 

本インタビューでご紹介のArt Book『SHIKAKU』が発売中です。詳細は公式サイトをご確認ください。

https://www.tomoeshinohara.net/news/

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