“余剰生地”からサステナブルなドレスをデザイン!(後編) /デザイナー・アーティスト・篠原ともえさん 【Cover Story】世界と社会をよくする時代へ!
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“余剰生地”からサステナブルなドレスをデザイン!(後編) /デザイナー・アーティスト・篠原ともえさん

歌手、女優、ナレーター、イラストレーターなど、多彩な顔をもつ篠原ともえさん。昨年はご主人とともにデザイン会社を立ち上げました。そしてこの夏、渋谷にて行われた、ギャラリーでの開催では初となる個展で、服を作る際に出る“余剰生地”を使ったドレスを発表。サステナブルな取り組みが話題になりました。表現者としての苦悩や葛藤と正面から向き合い、新たな境地を見出した篠原さん。前編では篠原さんの創作への思いをお話いただきましたが、後編では、ご自身の活動と社会がよくなるファッションの未来についてお話を伺いました。

(文責:DOWELL編集部・山田ふみ)

直感を信じ“四角い世界”へ

Art Book「SHIKAKU」より

結婚、会社設立、そして個展に向けた創作の開始。篠原さんにとって人生のターニングポイントとなったこの1年。心の中からあふれ出したものすべてを来場者に届けたい……。四角や端切れが一枚の布への思いへと発展していきました。

「展覧会開催までの道のりは決して平坦なものではありませんでした。創作において思うように形にならず落ち込んだり悩んだり、何をどう作ったらいいのかアイデアが出て来なくなったり。でも“絵を描きたい、服を作りたい”という情熱だけは変わりませんでした。自分がワクワク、ドキドキすることを遡って考えたとき、祖母の着物を見て心が震えたことを思い出しました。感動したことや深く悩んだプロセスも含めて、私なりの“四角い世界”へ飛び込んでみようと思ったんです。答えが見えてからは、もう無心で作品作りに没頭していきましたね」

ユーミン、嵐のツアー衣装デザインから学んだこと

「私はデビューした当時から、テレビ番組やステージで着る衣装を自分でデザイン・制作していました。既製品を買ったときにも、何かしら手を加えてオリジナルなものに変えていくことも好きでした。洋服だけでなく、身につけるアクセサリーや髪型、メイクの代わりに顔に貼るシールのセレクトまで(笑)」

ポップでキュート、カラフルで独創的……。一貫して“好き!”にこだわり、自分をブランディングしながら個性を開花させていたシノラー時代。衣装デザイナーになるきっかけについて伺うとーー。

「ユーミンさんのご主人で、音楽プロデューサーの松任谷正隆さんのラジオ番組に呼んでいただいたことがありました。そこで思いがけないチャンスをいただくことになりました」

番組の中でコスチュームデザインの話になったとき、松任谷さんに

「どんなドレスが作りたいの?」と尋ねられた篠原さん。

頭の中に浮かんだイメージのままを伝えると、

「面白そうだね……ユーミンの衣装やってみる?」

そのひと声を受け、これまで描き溜めていたデザイン画や資料をまとめ、再び松任谷さんへプレゼン。2013年、ユーミンのライブツアーの衣装デザイナーに大抜擢。当時さまざまなメディアに取り上げられ、大きな話題になりました。

「“好き!楽しい!”というシンプルな気持ちで自分の衣装を作ってきた経験が、こんな形で活かされることになるとは想像もしていませんでした。いま思えば、自分の感性のままに表現を続けてきた時間は、幸運をつかむための大切な“準備期間”だったのかもしれません」

そして2015年には、嵐のツアー衣装を担当。衣装デザイナーとしての活動が本格化していきます。

「今回の展覧会を終えたときにも同じことを感じました。耳を澄まし、目を凝らしながら私の作品と対峙してくださる方々とお会いしたとき、真摯にものづくりと向き合って準備を重ねてきたことが、皆さんにも通じたのだと」

「勇気をもらった」「私も何か作ってみたくなりました」「今の仕事を頑張ろうと思った」など、来場者の方々から多くのメッセージが寄せられました。先の見えない不確かな時代であっても、自分を信じて前に進むことの大切さを篠原さんの作品が教えてくれたのかもしれません。

土に還るサステナブルな素材を開発

今回の展覧会ではサステナブルな素材の開発にも携わった篠原さん。舞台衣装などの生地加工を専門とする「ogawamine LAB」(※)とのコラボレーションによって、「土に還る」生分解性のレーヨン素材が生まれました。

「耐久性が求められるステージ衣装では、生分解性の素材は、繊細さを理由に敬遠されがちで、実用化が難しい現実がありました。でもこの展覧会を機に、共同開発してみたいと考えたんです。植物のセルロースを科学的に取り出すことによって誕生した新素材は、透明感となめらかな光沢感があり、想像をはるかに超えた美しさでした」

繊細な光沢が美しい新素材レーヨンを布幅まるごと使用し、丁寧にギャザーを入れることで丸いボリューム感を表現したバルーンドレス。無心で描いたプリミティブな“まあるい線画”がそのままシルエットになったような愛らしさ。篠原さんの思いが詰まった作品のひとつです。

(※)ogawamine LAB https://ogawaminelab.com

Art Book「SHIKAKU」より

「洋服について学び直した昨年は、持続可能な生産の必要性を肌で感じた1年でもありました。服を生み出すデザイナーは、作ったものがどのように流通し、消費されていくかを見届ける責任があると思いました。サステナブルな暮らしに目を向け、無駄を出さないよう環境に配慮したものづくりは、ものを作る私たちが未来にむけて実践していかなければならない課題だと考えています」

世界と社会によいことは“心地いい”の中にある

最後に、篠原さんにとって「世界と社会によいこと」とはどのようなことなのかを伺ってみました。

「人や社会にいいことというのは、きっと自分にも“心地いい”ということ。絵を描いたり、縫いものをしているとき、私は心地よさを感じ、豊かな気持ちになります。自分の“好き”を信じて向き合っていけば大丈夫。心地いい暮らしの向こうには大切な人がいて、家族があって、その先にあるよりよい社会と世界につながっていくはずです。これからも、私がいま感じている心地よさを新しいクリエーションに変え、丁寧に、信念をもって創作活動を続けていきたいと思っています」

(前編)を読む>>>

篠原ともえ(デザイナー/アーティスト)

1995年ソニーレコードより歌手デビュー。歌手・ナレーター・女優活動をはじめ、衣装デザイナーとしても創作活動を続け、アーティストのステージジャケット、番組衣装を手がける。地方創生の地域ブランディングにも積極的に参加し、多方面からデザインの仕事に取り組んでいる。2020年、夫でクリエイティブディレクターの池澤樹氏とクリエイティブスタジオ『STUDEO』を設立。

 

本インタビューでご紹介のArt Book『SHIKAKU』が発売中です。詳細は公式サイトをご確認ください。

https://www.tomoeshinohara.net/news/

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