地方から日本を変える!『イナズマロック フェス』11年間の軌跡(後編)/アーティスト・西川貴教さん 【Cover Story】今日からはじめる!みんなで“DOWELL“宣言
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地方から日本を変える!『イナズマロック フェス』11年間の軌跡(後編)/アーティスト・西川貴教さん

“水の未来に、声を上げろ。”をスローガンに、滋賀県出身の西川貴教さんが主催する野外音楽フェス『イナズマロック フェス』。「滋賀ふるさと観光大使」に就任した西川さんの地元への想いを糧に、琵琶湖の環境保全と地方創生をキーワードに2009年より毎年開催されてきたイベントで、2020年で12回目を迎えました。そこで、このイベントに込めた両親への感謝の気持ちと新しい“家族”との出会い、そして50歳を迎えた西川さんの新たなる挑戦について伺っていきます。

(文責:DOWELL編集部・山田ふみ)

両親への感謝の想いを込めて誕生日に地元でライブを開催

琵琶湖の水質保全と地域創生を目的に、西川さんが発起人となって毎年行ってきた『イナズマロック フェス』。12回目の開催となった2020年は、新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、自身の誕生日である9月19日に、滋賀県庁の知事室からオンライン配信するという初の試みに挑戦。全国各地のライブハウスやスタジオから28組もの人気アーティストが参加し、西川さんは午後1時から夜9時まで、一人でMCを務め上げました。

『滋賀ふるさと観光大使』として故郷・滋賀県のために、地域創生と社会貢献を続けてきた西川さん。いまや西日本最大級の野外フェスとして存在感を発揮する『イナズマ』の開催月は毎年9月と決まっていますが、そこには西川さんの想いがありました。

「実は9月は、自分の誕生月なんです。9月といえば台風の多い季節でもあり、野外フェスには不向きなシーズンです。実際、天候によって中止を余儀なくされたり、落雷で中断するなんていうこともありました。何事も起こらずに開催できたことなんてなかったかもしれません(笑)。もうやめようと思ったこともありました」

しかし、一方で「絶対に1回や2回で終わらせるわけにはいかない」と感じていたのも事実です。それが、西川さんが『イナズマ』を毎年自身の誕生月である9月に開催する、もうひとつの理由です。

「誕生月に開催してきたのは自分のためではありません。そもそも地元に関わることをやりたいと思った一番の理由は、僕自身が地元に戻るきっかけを作りたかったからなんです」

ミュージシャンになることを夢見て17歳で家を出た西川さん。地元を離れてバンド活動を始めることに両親は強く反対したと言います。公務員の家の長男として育ちながら、父親の期待に背いてまったく別の世界に身を置いたことが、ずっと心にひっかかっていました。自ら望んで観光大使に就任したことも、毎年滋賀で『イナズマ』を開催するのも、やっと家族や親戚と同じように地域に貢献できると思ったから。

ライブは家族に会うためのきっかけであり、誕生日がある9月に開催を決めたのは「自分を産んでくれた母への感謝の気持ち」が込められていたのです。

毎年『イナズマ』の開催日が決まると、両親は嬉しそうに周囲の人や勤め先の後輩にそれを伝え、当日には姪っ子や甥っ子も連れて家族全員で会場に駆けつけたと言います。

新たな“家族”に恥じない野外フェスの続行を決意

「東京で仕事をしている間は、なかなか地元に帰る時間を作れませんでした。親の顔を見ることができるのも何年かに一回くらい。それで観光大使になって、イベントが決まり、これでやっと大手を振って実家に帰れると安心した時に、母の病気が見つかったのです。体が思うように動かせなくなる多系統萎縮症という進行性の病気でした。会うたびにいろいろなことができなくなっていて、徐々に言葉を聞き取ることさえ難しくなって……。会いに行く前に大泣きして、顔を洗ってから病室に見舞いに行くような感じでした。でも、一番辛かったのは母自身だったと思います」

故郷を離れて20余年。『滋賀ふるさと観光大使』に就任し、これからやっと親孝行ができると思った矢先の出来事でした。

「だから、9月は僕にとって特別な月なんです。自分が頑張っている姿をもっともっと母に見てもらいたかったのですが、数年前の『イナズマ』開催直前に母は亡くなりました。僕の中では、もうライブを続ける理由を見つけられず、次の開催のことも考えられないような状態が長く続きましたね」

苦悩と葛藤の中にありながらも、観光大使としてしばしば地元に戻ることもあった西川さん。ある時、「頑張れ、応援しているから」という言葉を、地元の方々からかけてもらったと言います。

「僕が帰ると、家族や親戚はいつもそう言ってくれていたのですが、同じ言葉を多くの方からかけていただいて、これはもう自分だけのことじゃない、新しい家族ができたと思って続けよう。自然にそう思えるようになったんです。温かい声援に恥じないイベントにしていけるように精一杯努めなければならないと。そして『イナズマ』の開催を心に決めました」

毎回素晴らしいアーティストが出演するロックフェスとして滋賀県外からもたくさんのファンが訪れるようになった『イナズマ』。このイベントによって莫大な経済効果が生まれ、県の知名度もアップしました。これも、どんな逆風にも負けない、がむしゃらな行動力と熱意と郷土愛があったからこそ。

西川さんの次なる目標は、「みんなが幸せになれる未来をつくること」。そのために、日本を支える地方に、もっと頑張ってほしいと言います。

人と人を繋ぐ“縁”を大切に次の10年へと向かう

「コロナ禍の中で、ライブなどがなかなか実現できない状態だったのですが、時間がある今だからこそできることもたくさんありました。滋賀県の市町村ではどんな悩みがあるのかを聞き取るために、各地域の市長さんと直接お会いしてお話を聞く機会を設けることもできました。僕が観光大使に就任した当時に県職員だった方との再会によって、また新たな関係が生まれて次の企画がスムーズに動き出したりするんですね。そんな嬉しいハプニングがあるのも、10年以上継続してきた結果の表れと受け止めています。そこで生まれた人と人との繋がりや“縁”を大切にしていきたいと思います」

(右)三日月大造・滋賀県知事

2020年の『イナズマ』を、初のオンラインライブで開催した西川さん。今回は配信プラットフォーム『サブスクLIVE』というシステムを活用しました。『サブスクLIVE』は、月額有料会員登録をすれば、誰もが月額わずか580円で視聴することができ、その収益がライブハウスやクラブなどの加盟店の活動資金に分配され、存続の支援に充てられるという仕組みです。『イナズマ』にも通じるその理念に西川さんが賛同し、今までにないスタイルによるオンラインイベントが実現したのです。

このような収益金や寄附金のシステム導入は、西川さん自身の海外での体験がベースになっていました。

「仕事などで海外に行く時、僕は必ずその土地の美術館や博物館を訪ねることにしています。チケットを買うと、そのうちの何%かがドネーション(寄附)されることを知り、これはいいな、と思っていたんです。それをヒントに、ライブでも最初から収益金の一部が寄附されるドネーションシステムを取り入れました。みんながライブを楽しむことが地域のためになる……。それって最高じゃないですか? 豊かな気持ちになれますよね」

最後に、西川さんが考える「Do well by doing good. 活動」について伺いました。

「これからの日本をよくするためには、健康寿命を延ばしていくことが大切になると考えています。そのためには一人ひとりが自分の健康を自分で維持するという意識を持つことです」

健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。(※注)「健康寿命を伸ばすことが今、国の重要な政策にもなっている」と西川さんは言います。

実は西川さんは、26歳でメジャーデビューして以来、音楽の他にもドラマ、舞台、バラエティなど活躍の場を広げていく中で、筋肉トレーニング歴が20年以上になるのです。

そして50歳の誕生日を迎えた昨年には、世界初の年齢別ボディコンテスト「ベストボディ・ジャパン2020日本大会」に挑戦。結果、「モデルジャパン部門ゴールドクラス」(50〜59歳)で優勝するという快挙を成し遂げたのです。

「社会貢献というと敷居が高いと感じるかもしれませんが、実は、病気をせずに元気にポジティブに過ごすことだけで、十分世の中のため、家族のためになっているんです。こんな時こそ日々の生活を見直し、健康で楽しい毎日を送ってほしいと思います」

(※注)WHO(世界保健機構)による

 

(前編)を読む>>>

西川貴教(にしかわ・たかのり)

1970年9月19日生まれ。滋賀県出身。

1996年5月、ソロプロジェクト「T.M.Revolution」としてシングル「独裁 -monopolize-」でデビュー。キャッチーな楽曲、観る者を魅了する完成されたステージ、圧倒的なライブパフォーマンスに定評があり、「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」「INVOKE」など大ヒット曲を連発する。

2018年からは西川貴教名義での音楽活動を本格的に開始。2019年にはNHK連続テレビ小説「スカーレット」に俳優として出演するなど、多岐に渡り新しい挑戦を続けている。

故郷である滋賀県から2008年「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、翌2009年より県初の大型野外音楽イベント「イナズマロック フェス」を主催。以降、地元自治体の協力のもと、毎年滋賀県にて開催している。令和2年度滋賀県文化功労賞受賞。

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