地方から日本を変える!『イナズマロック フェス』11年間の軌跡(前編)/アーティスト・西川貴教さん 【Cover Story】今日からはじめる!みんなで“DOWELL“宣言
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地方から日本を変える!『イナズマロック フェス』11年間の軌跡(前編)/アーティスト・西川貴教さん

“水の未来に、声を上げろ。”をスローガンに、滋賀県出身の西川貴教さんが主催する野外音楽ライブ『イナズマロック フェス』。琵琶湖の環境保全と地域創生をキーワードに2009年より毎年開催され、2020年で12回目を迎えました。地元・滋賀県に恩返しをしたいという強い想いが起点となり、西川さん自身が行政や地域の人たちと一緒になって創り上げてきました。アーティストとして幅広い分野で活躍する一方で、『滋賀ふるさと観光大使』として故郷の魅力を全国に発信。音楽を通して地域を元気にする西川さんの挑戦と『イナズマロック フェス』の進化について伺いました。

(文責:DOWELL編集部・山田ふみ)

音楽×地域創生で地元の人々を元気に!

西川さんは生まれも育ちも滋賀。2008年に初代「滋賀ふるさと観光大使」に就任し、その翌年から『イナズマロック フェス』(以下、イナズマ)をスタートさせました。”ロックフェス”というネーミングではあるものの、人気アイドルグループやお笑い芸人が登場するなど、ロックファン以外も楽しめるプログラムによって老若男女問わず多くの観客を魅了してきました。

昨年度は新型コロナウィルス感染拡大防止のため、初の完全オンライン配信を決行。過去出演経験のあるアーティストを中心に、ももいろクローバーZ、May J.、ゴールデンボンバーといった錚々たるアーティスト総勢28組が、全国各地のスタジオからライブやスペシャルトークを繰り広げました。フェスの収益金の一部と、2013年から行っている出演者が出品するチャリティオークションの落札金を全額滋賀県に寄附。毎回さまざまな趣向を凝らし、地域創生や地元の人々を元気にする仕組み作りを官民一体となって進化させてきた西川さん。まずはこのビッグイベントを始めたきっかけについて伺いました。

「滋賀といえば信楽焼や近江牛、大津京などを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実はそれ以外にも、素晴らしいものがたくさんある地域なんです。古くから文化や経済の先進地として栄え、世界遺産や国宝建築、社寺や城跡など歴史文化を感じる名所旧跡が数多く点在し、旧市街には今も江戸時代の古い街並みが残っています。また、日本最大の湖である琵琶湖もあり、生物の多様性を育む水郷や水路が暮らしの中に息づいています。近隣には京都や大阪といったメジャーな観光地があるものの、何かきっかけさえあれば滋賀にも多くの人が訪れてくれるに違いない……。僕はずっとそう思い続けていました。滋賀県から『滋賀ふるさと観光大使』に任命していただいた時、音楽を通じて地域活性化や社会貢献ができないだろうかと考え、故郷に恩返しをしたいという想いから『イナズマ』の開催を決めました」

観光大使就任のわずか1年後の2009年に“水の未来に、声を上げろ。”をスローガンに掲げ、フェスを主催。初回から、TETSUYA(L’Arc〜en〜Ciel)やLINDBERG、滋賀県出身のバンドUVERworldといったメンバーを地元に呼び、2日間で計3万人を動員。県初の大型野外フェスとして脚光を浴びました。

イナズマロック フェス 2018

地球の未来や次世代に繋がるイベントでなければ意味がない

西川さんが会場に選んだのが、琵琶湖畔の烏丸半島。ステージからも客席エリアからも琵琶湖が見渡せる、開放感いっぱいのロケーションが野外フェスを盛り上げます。

「素晴らしい琵琶湖の景色を見てもらうことで、水や環境問題について考えるきっかけになればいいと考えました」と西川さん。

「琵琶湖は近畿地方に住む人たちにとって貴重な水源ですから、物心ついた頃から“琵琶湖を守ろう”という意識がありました。今でこそ日本中の小学校などでも環境教育が行われるようになりましたが、僕らは小さな頃から地球温暖化が与える影響や環境保護について考えていましたし、周囲にはそのお手本となって活動している大人たちがたくさんいたんですね。『イナズマ』の開催を決めた時にも、ただ単に“やってよかった、楽しかった”で終わるのではなく、地域の方々に喜んでもらいながら、地球の未来や次世代の教育に繋がるイベントでなければ意味がないと思いました」

イナズマロック フェス 2019

開催3年目には、早くも10万人規模の大観衆で盛り上がるフェスに成長した『イナズマ』は、チケットが無くても入れる“入場無料エリア”を充実させ、そこに滋賀のご当地グルメが楽しめるフードコートを設置。地元の人に喜んでもらいたいという西川さんの想いがぎっしり詰まったフェスへと進化していきました。

「広大な琵琶湖が県の中心に位置する滋賀には、周辺の地域ごとの交流があまりうまくできていないという問題がありました。地域交流の “場づくり”のためには、やはり“食”が欠かせないと考えて、会場内にフードコートを設置する提案をしたんです。ロックフェスという枠にこだわらずに、絶品グルメあり、屋台あり。要はみんなが集まって楽しめる地元の“お祭り”という位置付けにしたかったんです」

滋賀が誇るさまざまなローカルフードや滋賀の地産地消に繋がるものを中心に、出店者が会場に大集合。西川さん発案のこの“フードコート”企画は、のちにライブ会場への出店権をかけた前哨戦イベント『イナズマフードGP(グランプリ)』開催へと繋がっていきました。

人気アーティストのライブ、お笑いパフォーマンス、絶品グルメなど、地域創生への想いと地元愛から生まれた『イナズマ』は、西川さんが当初から目標としていた「人を動かして地域を活性化する場づくり」を実現し、大阪でも京都でもない滋賀県のパワーコンテンツとして、滋賀の人たちの誇りとなって地元に浸透していったのです。

琵琶湖清掃

実は、西川さんのご家族や親戚には、教員、学校長、県職員や警察官など地域に貢献する公務員の方が多く、子供の頃から人や地域のために役に立つことをするのが当たり前の環境の中で育ちました。

地域のよい雰囲気作りの方法を滋賀県から伝えていきたい

「父親が県職員だったことも、地元の皆さんが僕らに力を貸してくださった要因だと思っていて、父には感謝しています。ここまで官民が深く関わり合いながら開催するフェスは、他にはないと思います。『イナズマ』はそのように、みんなが一緒になってひとつの空気を作り上げているイベントで、行政と一緒にやるからこそ意味があると僕は考えているんです。僕自身、利益を追求するためにやってきたわけではありません。『イナズマ』から『フードGP』といったイベントが派生する中で、地域や県の皆さんとの繋がりや信頼関係を築くことができました。こういったよい雰囲気作りを滋賀県から日本全国に伝えていきたい。そう思っているんです。嬉しいことに、最近では僕らの取り組みに興味を持った他府県の方々が、毎年ライブを視察に来てくださるようになりました。滋賀県が地域創生のリーダー的存在になればいいなと思っています」

そして「思い返せば開催初年度からすべて手探り。それが逆によかったのかもしれない」と振り返る西川さん。時には「県の補助金はどれくらい出ているのか」と聞かれることもあるそうですが、行政からの補助金は一切無しでこの大規模イベントを継続開催しています。昨年度は『イナズマ』のチャリティオークションの売り上げ金173万1301円を、琵琶湖の環境保全のための「マザーレイク滋賀応援基金」へ寄附するなど、その貢献度は計り知れません。西川さんのマスコットキャラクター「タボくん」も県のPRなどで大活躍。そこには「滋賀県に恩返しがしたい」という強い気持ちと、音楽を通じて社会をよくしようとする『イナズマ』の信念が貫かれています。

故郷、滋賀へ貢献したいという気持ちで『イナズマ』を始めた西川さん。後編では、開催月に込めた想いなどを深堀りしていきます。

 

(後編)を読む>>>

西川貴教(にしかわ・たかのり)

1970年9月19日生まれ。滋賀県出身。

1996年5月、ソロプロジェクト「T.M.Revolution」としてシングル「独裁 -monopolize-」でデビュー。キャッチーな楽曲、観る者を魅了する完成されたステージ、圧倒的なライブパフォーマンスに定評があり、「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」「INVOKE」など大ヒット曲を連発する。

2018年からは西川貴教名義での音楽活動を本格的に開始。2019年にはNHK連続テレビ小説「スカーレット」に俳優として出演するなど、多岐に渡り新しい挑戦を続けている。

故郷である滋賀県から2008年「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、翌2009年より県初の大型野外音楽イベント「イナズマロック フェス」を主催。以降、地元自治体の協力のもと、毎年滋賀県にて開催している。令和2年度滋賀県文化功労賞受賞。

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