(第13話)「自然エネルギー活用」について考える スメで作るアスパラガスのミモザ風のレシピ/門倉多仁亜 【連載】あなたの「おいしい」が、だれかの「うれしい」に
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(第13話)「自然エネルギー活用」について考える スメで作るアスパラガスのミモザ風のレシピ/門倉多仁亜

先日、菅首相が訪米してバイデン大統領と気候変動問題を話し合ったことがきっかけになったのか、日本が2050年に脱炭素社会を実現しようとしていること、そしてそのためには再生可能エネルギーの活用が不可欠であることなどを、ニュースで見聞きする機会が増えました。

そこで今回、再生可能エネルギーについてのコラムを書くにあたり、海外では再生可能エネルギーに関する話題は日常的に取り上げられているのか知りたくなって、ドイツに住む友人たちに話を聞いてみましたが、なぜだか、戻ってくるのは素っ気ない返事ばかり。

ドイツ人は再生可能エネルギーに関心がないのかしら。いや、あのエコな国に住んでいる人たちにかぎってそんなはずがないと、あれこれ考えてみて、はたと素っ気ない(特別には盛り上がっていない)理由に思い当たりました。

再生可能エネルギーに素っ気ないドイツの友人たち

ドイツでは「2050年までに再生可能エネルギーでの発電比率を80%に引き上げる」という目標が定められていて、政府のトップから地域の自治体・市民まで、みんながそこへ向かって進んでいます。たとえば、ある地域に適した方法で発電をして、その電力を近隣地域に送電する小さな発電所があちこちにできていたり、あるいは、再生可能エネルギーで発電された電力だけを取り扱う電力会社も増えたりしています。

つまり、すでに再生可能エネルギーが生活に組み込まれているので、いまさら取り立てて話題にすることもないのです。

なぜいまさら再生可能エネルギーの話?

ドイツの友人たちは、こんな話をしてくれました。

「自分たちにできることは再生可能エネルギーを支持すること。そのためには、環境保護に対する意識の高い電力会社を選んで利用・支援するだけでなく、旅行に行くときも環境に配慮した施設やホテルを選んだり、子供たちを再生可能エネルギーのテーマパークへ連れて行ったりして、みんなでエコを体験することも大切なんだ」

まさに「Do well by doing good.」の精神ですね!

またドイツでは、Verivox.de(※注1)というウェブサイトを利用すると、郵便番号を入力するだけで、利用できる電力会社の比較ができます。そのサイトでは、それぞれの会社の料金だけでなく、発電方法や温室効果ガスの排出量もチェックできる仕組みになっていて、もちろん最初からÖkostrom(再生可能エネルギー)にしぼって電力会社選びをすることも可能です。

これだけ日常生活に根付いているのであれば「なぜいまさら再生可能エネルギーのことを話題にするんだ?」と、不思議に思われるのも当然かもしれませんね。

こちらの記事でも、日本語でドイツのエコ施設についてたくさん紹介しています。

http://www.newsdigest.de/newsde/features/8134-erneuerbare-energien-in-deutschland/

(※注1)参考URL:https://www.verivox.de

ドイツが昔から環境先進国だったわけではない

今でこそ環境先進国のドイツですが、ずっと昔から環境保護に熱心だったかというとそのようなことはありません。ドイツが環境問題を意識し始めたのは、1960~70年代のことです。当時のドイツは経済成長第一で突き進んでいましたが、次第に、経済発展が環境に与える悪影響について声をあげる若者たちが増えていきました。私は小学生のころに、ヴィールの原子力発電所建設に反対する若者たちのデモの様子を祖父母のテレビで見たのですが、そのときの強烈な印象は今も残っています。彼らは高濃度の放射性物質を運ぶ列車を通すまいと線路に横たわって抗議したり、「酸性雨でドイツの森が死んでいる!」「中距離弾道ミサイル配備に反対!」など、常に声をあげていました。「過激派」と呼ばれたデモの参加者たちは、ヒッピーのような格好をしていて、当時の一般的な市民からは変人扱いされていました。

カウンターカルチャーの組織が集まって結成された「緑の党」

このように、環境問題について、一般市民はあまり興味のなさそうだったドイツでしたが、1983年に転機が訪れます。環境問題に関心のある若者や、ゲイ解放運動などをはじめとするいろいろなカウンターカルチャーの組織が集まって「緑の党(※注2)」が結成され、選挙の結果、連邦議会で議席を獲得したのです。

私は「緑の党」の議員が初めて連邦議会に出席したときのことを覚えています。スーツやネクタイといった国会議員然としたいでたちではなく、着ているのは手編みのセーターで、足元はスニーカー。そして髪の毛とヒゲは伸ばしっぱなしでした。

(※注2)参考URL: https://www.dw.com/de/die-grünen-als-neue-volkspartei/a-45846952

経済最優先の政策を掲げていた、当時のコール首相を中心とする保守的な政治家たちと「緑の党」の議員との対比はあまりにも強烈で、ショックを受けたドイツ人もたくさんいたと思います。でも若者は、「緑の党」を歓迎しました。

私の通っていた高校でも「緑の党」の議員を真似て、ヒッピーのような格好をしている生徒が大勢いました。また授業中も国会中と同じように編み物をしながら話を聞き(編み物には「抗議をする」という意味があるそうです!)、意見があるときには手をあげてはっきりと伝える。みんなで考え、議論を重ね、社会を変えていこうという雰囲気がありました。

余談ですが、後にコール首相が再選したとき、「緑の党」の女性議員は、彼を祝福するために、花束ではなく枯れた松の枝をプレゼントしていました。これには、森の衰退を食い止める市民活動に目を向けてほしいというメッセージが込められていたのです。

「緑の党」が連邦議会で発言できるようになったおかげで、どんな政策を議論する場合でも、環境への影響を問いただす声が聞こえるようになりました。

その後「緑の党」は、ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故に衝撃を受けた国民からの支持を増やし、1998年には初めて連立政権に参加。政権与党となりました。そして2000年には、歴史的成果と言われる「原子力合意」を電力会社との間で実現。「すべての原発を稼働開始後約30年で停止する」という協定が結ばれたのです。

しかしそのような決定を受けても、懐疑的な人はたくさんいました。

「どうせ石炭に頼るんでしょう?」「再生可能エネルギーだけでは、電力供給は不安定になる」「隣のフランスから原発で発電した電気を買うことになるだけだろう」「電力価格が上がれば産業はどうなるの?」など、ドイツのような工業国が再生可能エネルギーだけで電力需要を賄うのは、非現実的と思われていました。

2005年に首相に就任したメルケル氏

2005年に首相に就任したメルケル氏もそんな1人だったのか、2010年には、すでに決定していたはずの32年間という原発の稼働期間を12年も先延ばしにしました。メルケル氏は、もともと保守政治家であるコール首相にかわいがられていました。そして、彼の後任として保守寄りの政党であるCDU(ドイツキリスト教民主同盟)の代表となり、また、2010年当時は企業寄りのFDP(自由民主党)との連立政権を組んでいたという経緯もあるのでしょう。

しかしその1年後に起きたのが、東日本大震災による、福島第1原発の事故です。ドイツでは、4万人もの市民が手を繋いでデモをするほどの高い関心を集めました。この原発事故に強い衝撃を受けたメルケル首相は、すぐに倫理委員会を立ち上げてドイツの未来について議論を開始。委員会のメンバーには、エネルギーの専門家や産業界からの代表者に加え、宗教家や哲学者も名を連ねていました。その議論はテレビ中継され、私も東京からインターネットを通じてその一部を見られるほど、オープンなものでした。そして各方面からの意見をまとめた結果、メルケル首相は、ついに再生エネルギーがドイツの未来であるとして、2022年までの脱原発を決定したのです。

あれから10年。無理ではないかと言われながらも、ドイツは再生エネルギーを軸とした電力供給へ切り替えることで、2022年の脱原発(※注3)を達成しようとしています。

(※注3)参考URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR09BBV0Z00C21A3000000/

”スメ”という火山性の天然蒸気ガマ

冒頭でお話しましたが、日本政府も再生可能エネルギーに力を入れていくという報道を、よく耳にするようになりました。私はそのことに、とても期待しています。

偶然にも最近、地域に根ざした日本の自然エネルギー活用の一例に触れる機会がありました。

私が住む鹿児島県の鹿屋市から、フェリーに乗って、錦江湾を挟んで反対側にある指宿市に住む友人を訪ねたのですが、彼女によれば、ここではほとんどの家庭が温泉を引いていて、お風呂は毎日天然温泉なんだそう。蛇口から砂が流れてきて不便なこともあるのよ〜なんて言っていましたが、なんて羨ましい!

また、鰻地区という集落には、それぞれの家の敷地に”スメ”という火山性の天然蒸気ガマがあります。観光客が使うことができる施設で、私もそのカマの体験をさせてもらいました。ピクニックベンチの隣にカマドが作ってあり、そこから湯気が勢いよく立ち上っています。そしてカマドには“むしろ”が敷かれているので、そこに野菜や卵を置いて、もう一枚のむしろを被せれば、自然の力で料理が作れてしまうという仕組みです。数分の間に野菜は蒸され、卵も茹で上がりました。葉っぱごと蒸したカブは、生ハムと和えてサラダを作りましたが、野菜の味が濃く美味しかったです。

フェリー乗り場へ向かう帰り道では、九州電力が運営する地熱発電所(※注4)も見かけました。このような、地域に根ざした発電方法があるのはここだけに限られることはないはず。きっとそれぞれの地域に、それぞれのよい知恵があることでしょう。

(※注4)参考URL:https://www.ibusuki.or.jp/tourism/view/post-59/

鹿児島県指宿市 鰻池区の集落のスメ

本当はドイツも日本も、豊かな資源に恵まれた国?!

日本とドイツは資源のない国だと、私は学校で習いました。しかし、人間の知恵と身近な自然をうまく利用すれば、本当はドイツも日本も、豊かな資源に恵まれた国なのかもしれません。今の世代で環境を破壊してしまうことなく、これから先の未来でも、安全で豊かな暮らしができる日本であって欲しいと願います。そのための新しい考え方や仕組みを、みんなで考えていきたいですね。

スメで作るアスパラガスのミモザ風

材料(34人分)

・アスパラガス 15本

・卵 2個

・ドレッシングの材料

塩、こしょう 少々

はちみつ 小さじ1

マスタード 小さじ1

黒酢 大さじ1

オリーブ油 大さじ4

新玉ねぎみじん切り 大さじ1(15グラム)

ケッパー 小さじ1

作り方

①アスパラガスは下の硬い部分を切り落とす。切り落としてもまだ硬い部分が残っていたら、少し皮をむく。

②好みの硬さに蒸す(アスパラガスの太さに大きく左右されるが、今回は5分くらい)。すぐに食べない場合は冷水にとって色止めして、水気をよくきる。

③卵は固茹でにする(10分)。冷水にとってすぐに冷ます。

④冷めてから卵の殻をむいて、半分に切って白身と黄身に分け、黄身はザルでこし、白身は細かく刻む。

⑤ドレッシングを作る。ボウルに塩、こしょう、はちみつ、マスタード、黒酢、オリーブ油を入れて混ぜ合わせる。刻んだ新玉ねぎとケッパーも混ぜる。

⑥アスパラガスを皿に並べ、ドレッシングをかけ、卵の白身と黄身を散りばめる。

鹿児島県指宿市 鰻池区の集落のスメ 温泉好きだった西郷さんは鰻温泉を特に愛したと言われています。

<プロフィール>

門倉多仁亜

1966年兵庫県生まれ。日本人の父とドイツ人の母の元で日本、ドイツ、アメリカで育つ。国際基督教大学卒業後、証券会社の勤務を経てコルドンブルーにてグランティプロムを取得する。

現在は、東京と夫の実家のある鹿児島の2拠点をベースに暮らしており、料理教室を主宰する傍ら、メディアを通してドイツ人のシンプルな暮らしをメディアを通して紹介する。

著者、「タニアのドイツ式心地よい暮らしの整理術」(三笠書房)、ドイツの焼き菓子(SBクリエイティブ)など。

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