(第14話)西欧で需要が高まる「植物性タンパク質」の話 枝豆サラダのピタパンサンドのレシピ/門倉多仁亜 【連載】あなたの「おいしい」が、だれかの「うれしい」に
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(第14話)西欧で需要が高まる「植物性タンパク質」の話 枝豆サラダのピタパンサンドのレシピ/門倉多仁亜

鹿児島に暮らすようになって1年が過ぎました。そして家庭菜園を始めてから早くも2年目となり、育てる植物や野菜の種類も少しずつ増えてきました。今年の3月には初めてイチゴの苗を植え、最近では、熟れたイチゴはないかな〜と、畑をチェックするのが何よりの楽しみとなっています。

そして6月は、じゃがいもと枝豆の収穫に期待しています。茹でたての枝豆にビール! 最高の組み合わせですものね。枝豆と言えば、いまでは海外でも人気の食材です。以前は誰も知らなかったのに、近年の和食ブームで”発見”されたようですね。質の良い植物性タンパク質としても注目され、”Edamame”という名称で主に冷凍食品として販売されています。

西欧で増えつつあるベジタリアン

Edamameが注目されているのは、西欧でベジタリアンが増えていることも理由のひとつでしょう。以前の記事でも紹介したのですが、ドイツの友人たちは食べものを選ぶとき「美味しい」とか「好き」という基準だけでなく、その食材が、私たちの口に入るまで、環境へどれだけの負荷をかけているかを考えます。

ドイツ人は肉をよく食べますが、肉は環境に優しい食べ物とは言い難いところがあります。牛や豚などが成長する過程で二酸化炭素を大量に排出し、輸送の際にも多くのエネルギーを必要とする現実があるからです。そこでドイツ人は「肉の消費を減らすことは、個人が取り組める地球温暖化対策のひとつ」と考えているのです(※注1)。

(※注1)参考URL:https://www.tokyo-np.co.jp/article/45380

そういった背景もあり、肉食が盛んなドイツでも、ベジタリアンは増えています。実際、健康志向のスーパーに行くと興味深い食材が目につくようになりました。ひき肉料理の代わりに使える大豆ミートや大豆で作ったソーセージはもちろんのこと、パンと一緒に食べられる新しいスタイルの豆腐製品、いろいろ販売されるようになったのです。

例えばMandeln-Nuss-Tofu(アーモンドナッツ豆腐)(※注2)。

アーモンドとヘーゼルナッツが入った豆腐を燻製にしたもののようです。食べ方としては、スライスしてパンに乗せたり、スープやサラダに調理することが提案されています。日本人であれば「なぜそこまでするの?」と思うのでしょうが、大豆食品初心者のドイツ人には、豆腐の白さと、やわらかく滑らかな食感も初めての体験で、違和感を覚える人が多いのです。

(※注2)参考URL:https://www.amazon.de/dp/B06W5BNSRN/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_Z83ETKNXMJYSV6SW7BY1?_encoding=UTF8&psc=1

そんな人のために開発されているのが、植物由来のハンバーガーです。コロナ前に行った香港のホテルで”Impossible Burger”(※注3)を食べたことがあるのですが、野菜とバンスに挟まれたハンバーグを、たっぷりのソースと一緒に食べるととても美味しい! 何も聞かされずに食べていたら、そのハンバーガーがお肉でないことには気がつかないでしょう。
(※注3)参考URL:https://impossiblefoods.com

日本には昔から、大豆を上手に使った料理がたくさんある

このように西欧では、最近、大豆を使った食品がとても注目されていますが、日本には昔から、大豆を上手に使った料理がたくさんありますね。少し前の話ですが、完全ヴィーガンの友人が来日したとき、東京・入谷にある、かつてジョンレノンも訪れた”梵”という精進・普茶料理のお店に行きました。コース料理を頼んだのですが、出されるものすべて、美しくおいしいものばかり! 植物性の食材だけで、こんなにもたくさんの種類の料理が作れるのかと本当に驚きました。

もっとも、そのような有名店に行かなくとも、実家のお寺で、親鸞上人の祥月命日に営まれる法要”ご報恩講”で出される料理は基本、精進料理です。お皿からはみ出るほど大きな油揚げを甘辛く煮込んだり、大根おろしの胡麻和えを作ったりしていました。考えてみると、植物性タンパク質が豊富な和食材はたくさんあります。厚揚げや車麩、納豆、豆乳、おから……。そうそう、”がんもどぎ”などは、それこそ元祖”肉もどき”食材です。

ポール・マッカートニーが呼びかけている”No Meat Monday”

現在、ポール・マッカートニーが呼びかけている”No Meat Monday”が注目されています。これは週に1回は肉を食べない日を作ろうという提案で、会社の食堂や学校でも取り組みが始まっているようですが、誰もが賛成というわけではないのも事実です。NYTimesの記事で読んだ、フランスでの出来事ですが「リヨンの給食から肉のメニューをなくす」とリヨン市長が発表したところ、肉や内臓料理が名物のリヨンで暮らす市民たちは「エリート主義だ!」と抗議して大騒ぎとなったようです(※注4)。このリヨン市の決定は、ポール・マッカートニーが提唱しているキャンペーンとは関係なく、コロナ禍での安全対策として導入したものだったのですが、肉食のイメージが悪くなることに敏感になっている人が多いようです。

(※注4)参考URL:

https://www.nytimes.com/2021/03/18/world/europe/france-lyon-school-meat.html

https://www.bbc.com/japanese/56150435

人々は、田畑で育つ身近な食材で豊かに暮らす知恵を育んできた

ドイツにも、肉食を否定すると過敏に反応する人が多くいます。肉が好きな人は「毎日肉を食べられるのは、戦後に勝ち取った豊かさの象徴だ!」と思っているようです。ドイツには、豚を育てて食べる文化は古くからあったようですが、昔は肉は貴重品で、日曜日に教会の朝の礼拝から戻ってきて食べる特別なものだったのです。英語で言うところの“Sunday Roast”と一緒です。イエス・キリストが十字架にかけられたのは金曜日で、この日は精進の日です。逆に日曜日はお祝いの日ということで、何を食べてもよいとされていたようです。

もともとドイツ人には農民が多く、みんな厳しい暮らしを送っていました。たまに手に入った肉は、きつい肉体労働を強いられていた男性が食べるもの。母によれば日々のタンパク源は、牛乳、クワルク(フレッシュチーズ)、卵、オートミール、全粒粉のパン、ヘーゼルナッツ、ひまわりの種、レンズ豆などだったようです。そして母が子供のころ一番好きだった思い出の料理は、茹でたてのじゃがいもにクワルクを添えて、刻んだハーブと塩を散らしてアマニ油を回しかけて食べるというシンプルなものだったと話してくれました。クワルクはドイツ人にとって身近な高タンパク低脂肪食材で、しかも値段も手頃。日本人にとっての、豆腐の位置づけなのだと思います。

人々は、田畑で育つ身近な食材で豊かに暮らす知恵を育んできました。季節のものをシンプルにいただく。自分に優しい食べ物を選ぶことは、地球にも優しい、そんな気がしています。そこで今回は、自分の畑で育てた枝豆を使ってサラダを作りたいと思います。枝豆も高タンパクですが、それにもう一つ、身近な高タンパク食材である厚揚げをプラスすることで、満足感のある料理に仕上がったと思います。

枝豆サラダのピタパンサンド

サラダはそのまま食べても美味しいですし、ピタパンなどにはさむと手軽なランチになります。豆は枝豆でなくても大丈夫。缶詰の煮豆などを使ってアレンジしてください。

材料(作りやすい分量)

・枝豆(生、冷凍でも可)50g(さやなしの分量)

・とうもろこし 1本

・オクラ 10本

・新玉ねぎ 1/4個

・きゅうり 1本

・トマト 中1個

・3色のピーマン 小さめを各色1個で、計3個

・厚揚げ 1枚

・細ネギ 2~3本

・ズッキーニ 1/2本

・ニンニク 1/2かけ

・オリーブ油 少々

・塩コショウ 少々

・ピタパン(今回は全粒粉) 4枚

タヒニドレッシング

材料

・プレーンヨーグルト 大さじ2

・ごまペースト 大さじ3

・にんにくのすりおろし 1/4かけ

・レモン汁 大さじ1~2

・水 大さじ2~4

・塩、コショウ 少々

作り方

① 枝豆は生のものであれば、塩茹でして鞘から取り出す。冷凍なら表示通りに自然解凍して鞘から取り出す。

② とうもろこしとオクラは、茹でて食べやすい大きさに切る。

③ 玉ねぎは薄くスライスする。

④ きゅうり、トマト、ピーマン、厚揚げは他の材料の大きさに合わせて、1.5cm角くらいに切る。

⑤ ズッキーニも食べやすい大きさに切って、水に浸してあくを取る。大きなズッキーニの場合なら、1cmの厚さにスライスして4等分に切るとちょうどいいくらい。しばらくしたら水気をしぼる。

⑥ フライパンにオリーブ油を入れ、水気を絞ったズッキーニを炒める。火が通ったらみじん切りにしたニンニクを加え、香りが出るまで炒め、塩とコショウをする。

⑦ ボウルに野菜を全部入れ、塩とコショウをふり、オリーブ油を回しかけ、下味をつける。

⑧ タヒニ・ドレッシングの材料を混ぜ合わせ、好みのとろみになるよう水で調整する。

⑨ ピタパンは軽くトーストして半分に切って、中にサラダを詰め、⑧で作ったタヒニ・ドレッシングをかける。

<プロフィール>

門倉多仁亜

1966年兵庫県生まれ。日本人の父とドイツ人の母の元で日本、ドイツ、アメリカで育つ。国際基督教大学卒業後、証券会社の勤務を経てコルドンブルーにてグランティプロムを取得する。

現在は、東京と夫の実家のある鹿児島の2拠点をベースに暮らしており、料理教室を主宰する傍ら、メディアを通してドイツ人のシンプルな暮らしをメディアを通して紹介する。

著者、「タニアのドイツ式心地よい暮らしの整理術」(三笠書房)、ドイツの焼き菓子(SBクリエイティブ)など。

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